【文学部】第38回高校生文芸コンクール

全国高等学校文化連盟・読売新聞社主催の第38回高校生文芸コンクール 各賞受賞

短歌部門で4年A組の福田匠翔(たくと)君が、最優秀賞・読売新聞社賞
文芸雑誌部門で『文學帖』第13号が優良賞

 本コンクールは2万点以上の応募がある、高校生が応募できる文芸コンクールの中では最大規模のコンクールです。
 文学部では、このコンクールに5年以上連続で入賞しておりますが、最優秀賞は初めてのことになります。

 福田君の短歌は
「おふくろの味のボルシチ食っている ロシアのイワン、ウクライナのイワン」

という作品で、審査員の栁澤美晴先生は、選評にて「奇しくも同じ名を持つ青年同士が敵味方に分かれて相争う。現実にあり得そうな話だ。「おふくろ」「食っている」の粗野な喋り言葉は自分と同じように家族の愛情を受けて育った青年達を見舞った悲劇を血肉化するためのものだろう。私は最低でも二度は全応募作に目を通すが、一度見ただけで、今年の最優秀賞はこれ以外にはないと確信した。才気の煌く一首に出会えたことを喜びたい。本作は批評の精神を宿すものと称賛され、併せて読売新聞社賞が贈られることとなった」と評されました。

 また、優良賞を受賞した文学部の文芸部誌「文學帖」第13号ですが、震災から10年が経過した時期に、被災された俳人高野ムツオ先生と、その作品を通しての対談を特集に据えた今号は、審査員から「俳句・小説と特集を組み、意欲的な作品構成が評価された」と評されました。

 12月16日に東京代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターにて、表彰式・記念講演、並びに講評会が行われました。表彰式の中での福田君の以下のスピーチが会場の大絶賛を受けました。末尾に福田君のスピーチを掲載します。
 本結果につきまましては、12月8日付けの読売新聞朝刊の全国版と12月9日付の読売新聞朝刊の愛知県版に掲載されたました。


以下、福田匠翔君の受賞スピーチです。

「この度は最優秀賞を頂き、身に余る光栄に存じます。選考委員の皆様、主催者の皆様に感謝を申し上げます。
 今回賞を頂いた短歌は

「おふくろの味のボルシチ食っている ロシアのイワン、ウクライナのイワン」

という短歌なのですが、この短歌はボルシチという食べ物から作りました。そして、そこから連想されるロシアとウクライナという国名を短歌の中に詠み込んだのですが、作ったときはそれほど戦争は意識しませんでした。そのため、この短歌には戦争の単語は一つも入っていません。
 しかし、読者の視点に立ってこの短歌を読んでみると、戦争詠になります。記者の方をはじめ、実際に読んだ方々にも、戦争詠として読まれました。短歌自体に戦争の言葉が無くても、読者の戦争の意識によって、戦争詠になる。つまり、この短歌を戦争詠にしているのは、読者です。ということは、ロシアとウクライナに対する戦争のイメージが無くなれば、その時この短歌は新しい姿を見せる、という訳です。
 そう思うと、短歌の読みの力というか、短歌の奥深さというか、その、短歌の詩情が如何に読み手の意識によって変わるか、短歌が読み手の意識によって引き出されるか、ということをとても実感しました。
 今回の受賞を糧にして、そして、短歌の「読み」ということを大切にして、今後も短歌に親しんでいきたいと思います。有難うございました。」